日本ピアサポート学会

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本学会の概要

会長あいさつ

ピア・サポートモデルの汎用性と実践の独自性

日本ピア・サポート学会 会長  懸川 武史

日本ピア・サポート学会 会長  懸川  武史

 私のピア・サポートとの出会いは、Ph.D. Trevor Cole氏による「PEER SUPPORT FACILITATOR TRAINING PROGRAMME」へ参加できたことで、ふり返れば20余年が経過しました。Cole氏は、ワークショップ中、機会があればピア・サポートは教育モデルであり、ビクトリア大学視察のときには、ワークショップモデルを参考にしたと話していました。2000年11月12日から8日間は、Cole氏宅でのワークショップと、カナダ、ブリティッシュコロンビア州ダンカンとビクトリアにおいてピア・サポートプログラムに基づく教育実践のフィールドワークがプログラムの内容でした。

 フィールドワークでの問いは、ピア・サポート活動に「共通するものは何が見られるのか」と立て、参与観察を行いました。教育実践の展開は、それぞれのコミュニティが抱える課題解決の場としてサポート活動を意図的に設定し、課題解決に向けたサポーターの資質・能力をアセスメントし、トレーニングプログラムがデザインされ、トレーニングが行われていました。当然、各コミュニティを取り巻く環境、児童生徒学生の実態が異なるように、ピア・サポート活動のプログラムは様々で、アセスメントに基づく独自性のあるものでした。先にトレーニングプログラム在りきでないことを確認できました。

 解決すべき課題の明確化、解決に向けたサポーターのトレーニングを含む、サポート活動が展開され、意図性の重要性と育成モデルであることが見えてきました。また、トレーニングプログラムの内容は、サポーターの課題解決に活用できる汎用性のあるものでした。

 共通していたのは円環的な体験活動であること、特徴としてアセスメントに基づく意図的なトレーニングが位置づけられ、トレーニング→プランニング→サポート活動→スーパービジョンからなる円環的なプロセスエディケーションととらえることができ、「ピア・サポートモデル」を構築しました。円環的な「ピア・サポートモデル」は、課題解決のプロセスをとおして問題解決の資質・能力が内在化されること、日常の教育活動に外在化されデザインされていること、そしてプロセスには汎用性があると考えました。

 帰国して実践協力校にピア・サポートモデルを提示し、中学校での学級経営上の課題を解決するため活用していただきました。解決に向けた教育実践のプロセスから、ピア・サポートモデルがスパイラルな特徴をもつことを確認できました。

 本学会も昨年20周年を迎え、第8期の役員により運営してまいります。

 多用な領域の会員の方々も入会されています。会員の方々が所属するコミュニティの課題、自身が抱える課題解決への支援に取り組むとともに、これからの学会組織の充実と機能化を運営の目的といたします。社会が抱える課題の解決においても、在り方や概念の多様性が許容される今、社会やコミュニティからの要請に応え、学会としてその役割を果たさなければならないと考えます。他領域ではどのような概念規定がみられるのか、実践・研究の内容から、汎用性、独自性を認め合う場を設定することが不可欠です。

 これらのプロセスにより、本学会としてのアイデンティティを確立する段階と考えます。