日本ピアサポート学会

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本学会の概要

会長あいさつ

今こそ「ピア・サポート」の出番だ

日本ピア・サポート学会 会長  池島 コ大
(兵庫教育大学)

日本ピア・サポート学会 会長  池島  コ大

 日本ピア・サポート学会では、ピア(友人、仲間)がもっているサポート力に着目し、学校教育をはじめさまざまな分野において人間力を高める方途を求め、実践研究及び理論研究を進めています。

 私見ですが、私は、これまで我々が蓄積してきたピア・サポートの真髄は、一言で言えば、「多様性(Diversity)の理解」であると思っています。本学会主催の第10次海外研修(2006年3月)で、カナダ・ブリティッシュコロンビア州キャンベルリバーにある“Campbell River Senior Secondary School”を訪問した時のことです。講堂の壁面に“Diversity is celebrated"と大きな文字が掲げられておりました。人はみんな違っていい、と意訳してもいいでしょう。私はこの言葉に、日本と大きな違いがあることに気がつきました。それは、カナダは多民族国家であるという点です。多民族国家であるが故に、「対話」を通してお互いに多様性を認め、尊重し合っていくこと、これが、国家が成り立っていくうえにおいて極めて重要なプロセスなのです。肌の色や言語の違いを越えて、相互理解していくことはなかなか容易なことではありません。が、幼少期から多様性理解の視点をもって、学校教育、社会教育においても学びを深めていくことは、子どもたちにとって大きな成長となっていくでしょう。わが国においても、国際化はすでに大きなうねりとなって押し寄せてきています。「対話」を通して多様性理解を進めていくことは、喫緊の課題として重要な視点だといえるでしょう。

 とはいうものの、今日の世界状況を見ると、憂うべき状況が起こってきています。これまで、我々はピア・サポートの考え方をもとに、「対話」の重要性、つまり多様性理解の必要性を学んできました。しかし、世界中で民族間の対立や国家間の紛争が勃発し、多くの人々が迫害され分断されていくという、悲しいニュースが後を絶ちません。今こそ、ピア・サポートの人間尊重の精神に立って、お互いに尊重し、誰でも安心して生きることができる社会をつくっていくべきです。それは我々の責務であると言っていいでしょう。

 わが国では、平成29年3月に次期学習指導要領が告示され、小学校は平成32年4月1日(中学校は平成33年4月1日)から施行となりました。この間、「道徳」を「特別の教科 道徳」に改める一部改正の学習指導要領が告示されました。私は、機会があって小学校道徳の検定本を拝読しましたが、ピア・サポートの内容と道徳の時間の指導内容に多くの点で合致していることに気がつきました。アクティブ・ラーニングを導入して「主体的・対話的で深い学び」を進めることや、いじめと正面から向き合う「議論する道徳」の時間となるよう、役割演技(ロール・プレイング)等を導入するなど創意工夫して進めることが求められています。今後、ピア・サポートの視点から指導法や支援策の検討ができそうです。「人のために役に立ちたい」という素直な思いを引き出し、それを思いやり行動(向社会的行動)にまで高めていく一連の取組を明示し、また、傍観者層をはじめすべての子どもたちがいじめと向き合うことができる、わが国の教育課程に馴染むピア・サポートプログラムの策定ができるのではないかと思います。

 また、小・中学校の一貫教育として義務教育学校の設置が進められています。是非、教育課程のなかに、ピアがもっているサポート力を活用する機会を取り入れていきたいものです。まさに今、ピア・サポートの出番だと思います。会員の皆様の創意と智恵を結集し、惜しみないご支援をお願いいたします。